2005年11月04日 (金) | 編集 |
先日うpしたこちらのエントリでjackさんにこんなコメントをいただきました。
ライフヒストリーとライフストーリーという
2種類の単語が比較的混在しているように思われるのですが、
ライフヒストリーとライフストーリーという2つの言葉で表されるものは、
それぞれ異なるものなのでしょうか?
それとも同じものなのでしょうか?
色々と本や論文を読んではみるものの、
いまいち違いがぴんとこないのです。

すみません。
おいら,ライフヒストリーとライフストーリーの厳密な差異に関してなーんも考えず,うっかり使ってました。
ダメじゃん>自分

そちらのコメント欄にも申し開き風味にお返事したのですが,おいらは今のところ以下のような感触を得ています。

ライフヒストリー研究
 …個人史を利用して,その向こう側にある社会・歴史的背景をより緻密に描き出す為の手法
ライフストーリー研究
 …個人史そのもの,個人によって生きられた「ものがたり」を追う手法

本来質的研究は,量的研究の俎上に載りえないマイノリティのエスノグラフィー作出を念頭にひねり出された手法ですので,社会・文化・歴史的背景を抜きにしては語れないものだと思います。
で,インタビューによる個人史研究の中で,そこに重きを置いたものがライフヒストリーなんじゃないかと。
そう思う根拠になっている書物はこちら。

4414429102病いの語り―慢性の病いをめぐる臨床人類学
アーサー クラインマン Arthur Kleinman 江口 重幸

誠信書房 1996-05
売り上げランキング : 25,318

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

この本は,病と文化のめぐりを描き出したものです。
「病の文化」を描き出す為に個人史を活用した,という印象が強いですね。
もういっちょ。

4623032477人生を物語る―生成のライフストーリー
やまだ ようこ

ミネルヴァ書房 2000-07
売り上げランキング : 69,426

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ライフストーリー研究の分野では,言わずと知れた有名本ですね。
様々なタイプの研究手法が扱われていて,「ものがたり」の奥深さを知ることができます。

11/04 23:45 追加
これはおいらが修論で参考にしたものです。
ここで紹介されている手法の一つが,協力者の方に過去を回顧していただくのにちょうど良かったので(ってある方からアドバイスいただいたのですが)。
こちらはタイトルどおり,「ライフストーリー」寄りです。
もちょっとお金が溜まったら,MaAdamsの新著を読んでみようと思ってます。

1572301880The Stories We Live by: Personal Myths and the Making of the Self
Dan P. McAdams

Guilford Pr 1997-01-03
売り上げランキング : 235,484

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


そう考えると,おいらがやりたいのはヒストリーじゃなくてストーリーなんじゃ?と思う金曜の朝。
やっぱだめじゃん>自分

ダメなおいらに愛の手を→ 人気blogランキングへ
スポンサーサイト
テーマ:心理学
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
ひなさん
お答えいただきまして、ありがとうございます。
実際様々な本や論文では、その辺の差異が不明確なまま
論じられていることが多いように感じています。
私自身未だによく分からないというのが正直なところです。

私なりに今まで読んだ文献から、
そうなのかなー程度ですが思った部分を引用いたしますと、

「ライフストーリーは口述の語りそのものの記述を意味するだけでなく、調査者を調査の重要な対象であると位置づけている」

「(いわゆる)「ライフヒストリー」がインタビュアーと語り手の相互行為のなかで構築されているにもかかわらず、論文や報告書などでは、インタビュアーの発話行為は削除され、さも語り手が「既にそこにあった」自らの過去を「自発的に」語っているかのように記述」するものという違いがあるそうです。
(足立重和(2003) 生活史研究と構築主義 -ライフストーリーと対話的構築主義をめぐって- 社会科学論集)

ただここでいう「ライフヒストリー」とは、(いわゆる)というカッコ付きのものであって、
あくまでこの著者(評論分なので評者かもしれませんが…)の意図に沿った定義である可能性があります。
調べれば調べるほど著者や論者によって定義が違うというのが、実はこのライフヒストリー・ライフストーリー研究の大きな問題なのかも、、なんて思ったりもします。

私も修論をライフヒストリー(上の定義で言えばですが…)を研究方法に選んで書いています。
ひなさんのエントリーで孤独感がやや薄れ、勇気付けられました。ありがとうございます!!
2005/11/04(Fri) 13:26 | URL  | jack #-[ 編集]
「ライフヒストリー」といえば、真実、あるいは客観的な視点からの事実を明らかにするという意味あいが強くなりますね。たとえ、インタビューをしたとしても、そこから明らかにされるのは、実際のところどうだったのかということですね。

 これに対して「ライフストーリー」といえば、真偽はともかくとして、その人の生きてきた人生の経験を明らかにするという意味あいになるでしょう。過去に何が起こったのかというよりも、その事実が、語り手にとってどのような意味をもつのかということが重視されるでしょう。

 臨床心理学の文脈でいうならば、病歴の聴取と、その人の経験を聴くということとの差異のようなものだと理解しています。
2005/11/04(Fri) 17:45 | URL  | hide #MX9KzIo6[ 編集]
臨床心理学で言えば,というと下山晴彦の言ってる「物語性」というキーワードを思い出しました.「ストーリー」と「プロット」が「ライフストーリー」と「ライフヒストリー」に似たようなことで使われてたような(曖昧ですが……)

「ライフストーリー」と「ライフヒストリー」っていうキーワード,改めてふむふむと考えさせられたりしました.ナラティブとは言うもののあんまり勉強していません…….何かオススメの本とかありますか……?
2005/11/04(Fri) 23:30 | URL  | truru #L1ch7n1I[ 編集]
>jackさん
大したお役にも立てませんで…(汗
挙げられている本,読んでみます。こちらこそありがとうございます~。
修論がんばってくださいませ。

>hideさん
hideさんのコメントには,いつもいつも,頭足らず言葉足らずなおいらのエントリの補完をしていただいてる気がします。ありがとうございます(恐縮

>臨床心理学の文脈でいうならば、病歴の聴取と、その人の経験を聴くということとの差異のようなものだと理解しています。

禿同です。
おいらの研究の文脈で言うなら,前者は飼育歴の聴取,後者に当たるのが飼育体験の聞き取り,ということになるでしょうか。

ただ,そう考えると,「ヒストリー」は「ストーリー」を抜きでも成立しますが,「ストーリー」は「ヒストリー」抜きでは成り立ち得ない気がします。
だからこそ「ヒストリー」と「ストーリー」の境界線が滲みがちなのだろうかとも思ったり。

>truruさん
おおお。おいらもどこかで拝読したことがありますですよ<物語性by下山先生
何でだったかなー…。

この辺の話題になると,やまだようこ先生がおっしゃっている「ものがたり」やら下山先生の「物語性」,社会学から派生した従来の「ライフヒストリー」やら,いろいろと混在してますねえ。
因みにおいらの最近の萌え対象,鯨岡先生は「ものがたり」に関しては批判的でいらっしゃるようです。
質的心理学会あたりでどなたかこの辺の在り様をまとめてくれないでしょうか(他力本願)。
アイデンティティ研究ではどっちを使ってるんでしょうね~。

おすすめの本,McAdamsのを追加であげておきました。
語りと聞き取りって奥が深いです。うむむ。
2005/11/05(Sat) 00:08 | URL  | ひな #grcoP6NM[ 編集]
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック