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【記念企画】出さない手紙―「軽度発達障害」レビューに代えて【最終弾】

やっと記念企画第3弾,てか最終弾を書き終わりました。
諸事情あって,存外以上に体力のいる仕事でした。
しかも以下の注意事項付きというこの往生際のなさですが,生温かい目でご協力くだされば幸いです。
どうもおいら,思い入れのある本になると,レビューというより著者への手紙という形式になるようです(参考例)。

※以下の文章から類推できることは各方面にお問い合わせなさらず,読んだ方の胸にしまっておいていただくのが粋ってもんだとお思いください。
※内容があまりになんなので,期間限定記事にするかもです。
※一応,以下の本のレビューです。

軽度発達障害―繋がりあって生きる軽度発達障害―繋がりあって生きる
(2008/11)
田中 康雄

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ではどうぞ。

田中先生,

お久しぶりでございます。犬飼です。
わたしが北国を離れてはや1年が経とうとしています。
雪のない冬は本当に久しぶりですが,愛犬共々少しの物足りなさを感じながらやり過ごしているところです。
関東は乾燥しているせいか,今シーズンは2回も風邪をひいてしまいました。臨床屋としてはあるまじきことですが。
先生の相変わらずのご活躍は,発達臨床業界の端っこにいるわたしにもよく拝見できます。
先生の書かれたものもやっぱり良く読んでいますし。

このブログの存在などもちろん先生はご存じないと思いますが,ここで先生の本のレビューを,と読者の方からリクエストを受けました。
これが悩みのはじまりでした。

北国時代,おそらく先生にとっては空前絶後なほど先生の優しい表情を曇らせ続けたのがわたしであろうことだとか(わたしにとっては自分の師がそのような表情をすることなど茶飯ごとなのですが。なにせ年季の入った問題児ですから),研究者志望だったわたしが先生の臨床に触れてしまったことで,臨床熱という厄介な熱病に侵されっぱなしで,研究と臨床のはざまでもう年単位でにっちもさっちも行っていないことだとか,そんなことを無視しては書けないことが分かっていたからです。

そのように先生を盛大に困らせながら,どっちつかずのわたしの脊髄は,おそらく先生からわたしが積極的に吸い取ったものではないかと思います(わたしの研究者ないしは臨床家としての背骨は前の師が入れ込んだものだと思われます)。
当時のわたしは,ここで研究者として大成できないのならせめてこのうまそうな髄を吸い取ってやれくらいに思っていたんじゃないでしょうか。

しかしそれもまた後々の自分を苦しめることに,その時は全然気づいていませんでした。

大言を吐くようですが,そのようにして出来上がった背骨と脊髄は,臨床をやっていくには,その基盤をなすものとしては超一流のものではないかと思います。
しかしその超一流の背骨と脊髄を支えるには,超一流の筋肉と脳が必要です。
それがまったくない脆弱な体のくせに,身に余る背骨と脊髄を持ってしまっているのが,わたしの喜劇的悲劇の始まりだと思います。
脊髄反射はするものの,それについていける身体も体力も筋力もないわけです。
これは本当にきつかった。
特に一番最初の職場は,精神的体力のなさに加えて,生きながら自分の背骨と脊髄をゴリゴリと削り取られていくような現場でしたから。
毎日泣きながら通勤していたのも,今はいい思い出ですけれど。

先日ある人から「怒りっぷりがいい」と褒められたのですが,そのような,ティファールの電気ケトルのごとくすぐに沸騰する血は明らかにわたしのものです。それは断言できます。
でもやっぱりその他は貧弱なのが実情です。
しかしわたしの脊髄は,当然ですがとてもいい匂いがするようで,会う人会う人に「なんで本格的に臨床やらないの?」「大学院辞めちゃえよ」「開業しちゃえよ」と言われます。

そのたびに,「いや,研究があるんで」と答えるわたし。
こんなネットの隅のブログにおいても自らを「臨床家」とは名乗らず「臨床屋」とうそぶく卑怯さ,自分の筋力のなさを研究というもっともらしい隠れ蓑で隠しているような状態です。
それが各方面に対して非常に失礼な行いであることも重々承知した上でのこれですから,非常に始末が悪い。

そんなわたしですから,先生の著されたものを読むたびにためらいと後ろめたさを感じています。
結局手に取ってしまうのですが。
それは,たとえるなら,振り返りたくもないほどの苦い恋に対するそれと似ています。
そのひとに似た後ろ姿や風の噂で流れてくるそのひとのことを耳にするだけでぎくりとしてしまうような苦い恋。
そう言えば,先生のもとで臨床を続けられるチャンスを自ら断つということは,憧れてやまない異性からの求愛を無視し続けることにとても似ていました。

そのつらさを薄めるべく,北国で過ごした,特に最後の1年,わたしは文字どおり貪るように先生の書かれたものを片っ端から集めて読みました。
先生が言葉の端に挙げられた本も何もかも読んだと思います。
ですので,それらのほとんどが収録されているこの本を書店で手にした時は,購入するつもりはありませんでした。

軽度発達障害―繋がりあって生きる軽度発達障害―繋がりあって生きる
(2008/11)
田中 康雄

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苦い恋の思い出の品を,改めて編みなおしたものをわざわざ手元に置きたい人などいるでしょうか。
けれど結局購入しました。
先生の文章のあの箇所に今すぐ触れたい,と不意に思った時,すぐに探し出せるというのはやはり便利です。
各章のあいだに「幕間」があるのも,演劇がお好きな先生らしいと思いました。

タイトルの「軽度発達障害」という言葉の「軽度」というのは,おそらく最初は医療者の側から発せられた,非常に単純な,「重度」に対しての「軽度」だったのだと思います。
それが実際の支援の難しさと各方面への配慮ないしは思惑から,「軽度」の意味が変成してきたのではないでしょうか。
軽いのだから適応していくのも容易いだろう,いやそうあってほしいという専門家の切ない願いと,軽いのだからさっさと適応して税金払えよ,というどこかの国の下心とが交錯し,当の子どもの声や思いは置いてけぼりで,言葉だけが独り歩きをしたように,わたしには思えます。

当然ですが,軽いからこそ辛いのだという現実は,そこには反映されていません。
先生は軽度でも生き難い子どもたち,と表現しておられますが,今のわたしには,軽度であるからこそ生き難いのではないかとさえ思えるようになりました。
障害の程度は軽度かも知れませんが,彼ら彼女らの生き難さは決して軽度などではない。
少しのギャップさえ許されない,教室という社会の縮図に向き合い,撤退していく子どもたちの姿の,何と切ないことか。
群れからはぐれた自分を責め,「僕がヘンだからいけないんだよね」と目に涙をためて唇をかみしめる彼ら彼女らに,われわれは何をすべきなのか。
これを問い続けることが,臨床に携わる者の責務なのではないでしょうか。
この大きな問いの前では,僭越ながら,先生の書きものでさえ,ヒントでしかないと思います。

そしてもうひとつです。
先生の文章を読んで,少しはわたしも大人になったのかなあと思える個所も出てまいりました。
それは,先生の眼鏡をはずして遊ぶAくんのことです。
発表された直後のわたしは,彼に対した時,先生と同じく黙することしかできないのではないか,と考えていました。
しかし今は,彼の生き方やお母様のこれまでを損なうことなく,彼と周囲とがコンタクトできるチャンネルを増やす方法にたどり着こうとあがくだろうと思います。
彼が世界とのやり取りを楽しいと思いながら,そのやり方を広げてくれるのなら,わたしはそれこそ裸踊りでも何でもやります。
それが今の臨床屋としてのわたしの,精一杯できることならば,何でも。

何だかやたらと長くなってしまいました。
今年の札幌は暖冬だそうですね。暖かいとはいえ北国の冬です。どうかご自愛くださいますように。
先生はこの先々も,ヒントをたくさん出して下さらねばならない方なのですから。

わたしがいつか何者かになった時には,改めてご挨拶に伺いたく存じます。

犬飼ぽちこ 拝

PS こちらのシンポジウム,こっそり見に行きます。

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  • 2009.02/19 22:45分
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